写真はデジタルも良いけれど、プリントしたらその難しさが楽しい。
ぱんだり(@pandaryman)でございます。
有意義な非効率に価値を感じる大人であり続けたい。
今回、ふと思いたちまして、写真プリントに関する僕の知っていることを少しずつまとめていこうかと思いました。
僕自身はプリント(特に印画紙)について勉強中の身ではあります。
そういった事で自分自身の成長の意味も含めてアウトプットをしていこうと思ったわけでございます。
さて本日は写真プリントの出力方法についてのお話をしていこうと思います。
いろんな流派や考えがあって良いと思うので、僕が言うことが全て正解だというつもりはございません。
その辺はあしからずでいつものようにお願いいたします。
印画紙出力とインクジェット出力
世の中には様々なプリント方法がありますが、写真に関して大きく分けると、「印画紙」出力と「インクジェット」出力の2種類に分けられると思います。それぞれにメリット/デメリットなどありますが、世の中は完全にインクジェットに向かっておりますね。
※昇華型?なにそれ美味しいの?(昇華転写はキレイだけれどインクジェットの分類なので今回は名言しません)
個人的に、インクジェットは優秀だとは思いますが、「深み」という点においてはまだまだ全然印画紙にはおいついていないと考えています。(感じ方には個人差があります)
その辺は考え方ひとつなので僕が正義というつもりはありませんが、有名モデルを撮影するスタジオのカメラマンさん曰く「やっぱり印画紙の深みはコストに変えられないものがある」んだそうで。
あれですよね、デジタルカメラとフィルムカメラのような関係性なのかもしれないですよね。
知らんけど。←言ってみたかっただけ。
僕自身は印画紙信者でありますが、だからこそデメリットも感じていて、インクジェットが秀でている点も感じています。
片方しか認めない人もいるようですが、それって結局、信じているものを何も知らないからできることでしょうしね。
さて、今回は、そんな印画紙とインクジェットの違いを説明しますね。
印画紙の大雑把なお話
Wikipediaによると印画紙とは
「印画紙(いんがし、英: photographic paper[1])は、写真フィルムに記録された画像を陽画として記録するために、感光材料を塗布した用紙である。」
だそうです。
「陽画」は、ポジのことですね。ネガの逆。誤解を恐れず言えば、見た目通りで色反転していない画ということですね。
ポイントは、「感光材料を塗布した用紙」という部分。
感光材料 … 光に反応して像を結ぶ=感光性 がある材料 のこと。
それが塗られている用紙が、印画紙なわけですね。←ここ、重要。
誤解を恐れずいえば、光を当てて感光させることで紙そのものから発色するわけです。
つまり、紙そのものに感光材料が塗られていなくて紙から発色しないものは印画紙ではないということでしょうかね。
印画紙にネガ/ポジや、デジタルをレーザーで感光させて、現像液→停止液→定着液という液体の薬品に浸して現像します。
そのため、インクが必要ありません。
もともとが液体の中で現像されるので、液体に強いです。
全国各地で地域が水没する忌まわしい事故や天災が起きていますが、適切に処理すれば印画紙の写真は生き返ります。
構造上、印画紙は三つの層でそれぞれ発色して色を作り出します。この「層」が、いわゆる「深み」につながると個人的には思っています。
それが正しいのかどうかは知らんけど。←言ってみたかっただけ。
なお、印画紙はCMY発色なので、K(黒)がありません。印画紙で出力される黒は疑似的な黒です。←ここ大事。
参考までに、印画紙とかネガについて知りたい方は、こちらが詳しく書かれているのでどうぞご一読されると良いかと。
前半何ページか読むだけで十分だと思います。
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/084.pdf
インクジェットの大雑把なお話
簡単に言うと「印刷物」です。こだわりやさんは「そんなもん写真じゃねぇ」なんていう人もいます。
まぁ、さらなるこだわりさんになると「レーザー出力の印画紙」ですら「そんなもん写真じゃねぇ」と言うらしいですが。
僕はまぁ、構造的に印刷物だとは思うけれど「それが写真じゃない」なんて思わないですけどね。
簡単に言えば、紙にインクを載せていくのがインクジェット。(顔料だとか染料というのはここでは重要ではないので。)
水に強いタイプもありますが、基本は水に弱いです。
あと、擦れにも弱いです。インク層に保護がないので擦れたらアウトです。
あと、色が浅いです。こればかりは大問題です。
良い紙を使っても、今一つ薄っぺらい気がします。ただ、このあたりは個人差かなぁと思ってもいます。
そのうち技術は上がってくると思いますが、人間が印画紙の層を知覚できなくなるか、インクジェットに層が作れない限りは深みに関する議論は印画紙>インクジェットの構図のままだとは思います。
色みに関しては、正確にキャリブレーション・マネジメントした環境下では、ディスプレイの透過光、プリントの反射光という性質の違いを除けば、大体見た目通りに出力されます。
これは非常に大きなメリットです。
印画紙との決定的な違いは、スキャナーでスキャンして拡大した時にインクのドットが見えることがあります。
この現象は印画紙では存在しません。(デジタルデータ上で色分解したのはまた別問題)
用紙としての最大のメリットは、K(黒)が使えることじゃないかな?なんて思っていたりします。
これは、本当に最大のメリットだと思います。今後の記事で、そのメリットについてはできるだけ書いていく予定です。
印画紙のメリット・デメリット
お話が濃ゆくなってまいりました。ここらでコーヒー等を淹れて頂き、一息つかれましたら以下をどうぞ。
色に関するお話
基本的にお店プリントになると思います。
色の調整が難しいですね。
無補正プリントができるお店があれば、無補正でお願いして、それに合わせてディスプレイなどの環境を調整すると良いです。
無補正というのも、機械上の自動補正をOFFにするというのがポイントです。この辺りは、機会があればまたお話いたします。
また、印画紙は、その構造上、色に偏りが出ます。最大のデメリットです。
いわゆるダイナミックレンジも狭いのでつぶれやすくもあります。
黄色が苦手です。オレンジになります。
あと、朱色も苦手です。濁ります。
デジタルでばかり処理している人は、多くがこの壁にぶち当たります。
仕方ないことですが、プロカメラマンですら「家のプリントと色が違う!」なんて発言をすることがあるようです。特殊な例だと思いたいですが。
ただ、お店プリントは、(激安店以外は基本的に全て)いつプリントしても色が一定に出力できるように調整されています。大きなメリットです。
薬品管理と乳剤(用紙)管理がしっかりしているお店は、別日に同じデータを出力しても、大体同じ色合いで出てきます。
聞けば、朝と夕方でも色が若干違うらしいです。
※僕は激安プリントショップで痛い目を見たことがあるので、そこは二度と使いませんが…
ポジフィルムなんて、フィルムのロットとペーパーのロットをうまく合わせて調整していたらしいですね。(聞いた話ですが。)
ほんと、深い世界。
印画紙の最大のメリットは、写真の深さ。残念ながら審査員ですら印画紙とインクジェットの区別がつかない人がいるようですが、わかる人にはわかるようです。
そして、安定した品質で出てくる以上は、カメラマン側がうまく合わせていけば楽に綺麗な写真が出せるんじゃないかと考えていたりします。
印画紙は、(自家現像を除く)お店による部分が大きいです。オペレーターさんの腕にもよります。
それが嫌であれば、全部自己責任にできるレベルまでお話を整理する必要があります。
他にもいろいろと印画紙の癖はあるのですが、それは機会があればまた書くかもしれません。
仲良くさせて頂いている方には、その辺の知識は共有させてもらってますが。
時間的制約
ネット注文なら注文してから到着するまで、実店舗ならお店に行く時間やそこでの待ち時間がデメリットになります。
大きな写真になると、1週間以上納期がかかることが通常です。
一般的な写真屋さんで、A3までくらいが即日納品の限界になってくると思います。
(場所によってはそれより小さいサイズまで。)
これ以上のサイズになると、プロラボ店頭でなら納期が速いはずです。
地方都市は、諦めて近所の写真屋さんからラボに送ってもらいましょう。
もしくはネットで、大判でも納期が速いところを探しましょう。
どちらにしても時間的制約は、インクジェットに比べてはるかにデメリットが大きいです。
簡単にまとめてみた
印画紙のメリット・デメリットを簡単に(乱暴に?)まとめてみました。
メリット
・基本的に品質は安定している。(お店とオペレータによる)
・わかる人にしかわからない「深さ」がある
・意外と水に強い
・実は多少の擦れにも強い
・インクジェットより若干、光耐性がある。
・機械投資のお金はいらない。
・良いオペレータに当たればパソコンを知らなくても綺麗にプリントできる。
デメリット
・赤色に弱い(ペーパーによる)
・黄色に弱い(ペーパーによる)
・ダイナミックレンジが狭い(昔から)
・納期がかかる
・sRGB環境でなければならない(もしかしたら機械によるかも)
・お店と色合わせするのが面倒。
・インクジェットより1枚単価なら高いことが多い。
・モノクロは職人がいるラボでなければ会話すら通じない。
・コミュ障にはお店にいくことがつらい。
・大体のお店が600x900mmが対応できる最大サイズなことが多い。
・両面印刷はできない。
インクジェットのメリット・デメリット
色に関するお話
基本的には自宅でのプリントになると思います。
自宅プリントで気をつけるべきことは、プリンタ~ディスプレイまでのカラーマネジメントをきっちりと行うということです。
インクジェットの場合、AdobeRGBを使うことも可能です。
プリンタ~ディスプレイまで一貫してAdobeRGBの設定にし、現像時もAdobeRGBに設定する必要があります。
この一連の流れの中に一つでもsRGBがあるとアウトだと思ってください。(大げさ)
なお、Web媒体などはsRGBであることが多く、なおかつ、印画紙プリントは基本的にsRGBなので、要注意です。
AdobeRGBの環境下で作成したデータを、「大きいプリントが自宅では作れないから」などの理由でお店プリントに出すと、汚い色で出力されます。
※AdobeRGBの現行をsRGBで出力するとくすんだ感じの色みになります。
インクジェットでこだわりのAdobeRGBプリントをしたい方は、徹底した自宅プリントが良いと思います。
そうすることで、sRGBでは表現できない広い領域での色表現が可能になります。
黒も含めてインクジェットには多種多様なインクの色が存在します。
そのため、印画紙では苦手な黄色や朱色といった色を鮮やかに表現できるという最大のメリットがあります。
ただ、色の層は1層しかなく、印画紙に見慣れた人間からすると色が浅い、印刷物と変わらない印象を受けることがあります。
これは、一般の方の印象も意外とバカにできなくて、全国指折りの印刷型のアルバム会社で作ったアルバムと、印画紙で作成したアルバムをお客さんに見比べてみてもらったことがあります。
ほぼ全ての人が「こっち(印画紙で作ったアルバム)が綺麗」と答えました。
※ただ、婚礼アルバムなので価格なども含めて人気だったのは印刷型のアルバムでした。
色とはまた若干違いますが、インクジェットは紙に感光材料面が不要です。
そのため、和紙などのいろいろな紙に出力できるのも、素敵なメリットと言えます。
時間的制約
家でプリントできるのは最大のメリットです。
対応するプリンタの最大サイズまでなら、「紙がある限り」「インクがある限り」出力できます。
大型機を置く場所さえあれば、A1のプリントですら、自宅ですぐにできます。
印画紙の大型機の導入費用がうん千万円ということを考えると、インクジェットの大型機など安いものです。
大口径レンズ1本分より安いものもあるわけですから、お安いものです。
印画紙であれば1週間かかったりするものが、当日自宅でプリントできる。
最高じゃありませんか??
簡単にまとめてみた
インクジェットのメリット・デメリットを簡単に(乱暴に?)まとめてみました。
メリット
・AdobeRGBが使える
・お家で気軽にプリントできる、すぐにプリントできる
・自分で色合わせができる。すべて自己責任でできる。
・色を合わせてしまえば、ほぼ画面通りに出やすい。(反射光と透過光の違いはある)
・常に成功する限り、コストは安い
・印画紙ではほとんどが出せないようなサイズのプリントもできる。(短辺1mサイズなど)←印画紙もあるにはあるらしい
・モノクロに強い!
・いろんな紙がある。和紙のようなものもある。両面印刷もできる。
デメリット
・機械の導入コストがかかる。
・AdobeRGBを使うなら全ての環境を整えなければいけない(カラーマネジメント)
・ペーパーによって大きく色が違う
・絵みたいな色調になりやすい(レタッチに注意)
・わかる人にしかわからない色の「浅さ」
・血液より高いインク代
・品質にこだわるなら高いペーパーと大量のインクが必要。濃色ほどインクがなくなる。
・突然壊れる本体
・出力完了後にプリントに擦れがあると地獄。大判なら、なおさら地獄。
・久しぶりに使うと目詰まりしてしまう、インクジェットあるある。
・擦れによわい。水に弱い種類がある。
僕はコスト勝負はしない そして、本日のまとめ。
印画紙・インクジェットそれぞれにメリット・デメリットがあることが分かって頂けたと思います。
よく「インクジェットは安い」とか言いますが、こういった比較はしません。
なぜなら、人によってコスパ(価値にたいする価格)の感じ方は違いますし、用途によっても違います。
「インクジェットは安い」は、「作業人件費=0円」として考えた場合の価格であることがほとんど。
作業人件費を考慮した時に、必ずインクジェットが安くなる保証もありません。
大切な事は、目的にあったプリント手段を選択すること。
僕は個人的には印画紙が好きですが、インクジェットが劣っているとか印画紙が劣っているとかいうつもりはありません。
両方を知らずして片方だけを妄信して他を否定することは非常にダサいと思うので。
まずは、ちょっとお金を出して、両方を楽しんでみるのが良いのではないかな?と思っております。
今後もこのシリーズは気が向いた時に、少しずつ更新していきます。
少しずつでも読んでくださった誰かのためになればよいなと思っております。
長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。
ぜひとも、プリントを楽しんでみてください。
ほいじゃあの!
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